第5.「登録免許税制」から「登記手数料制」への移行実現
不動産登記の登録免許税制(旧登録税)は、日清戦争による戦費負担等により国費が増大したことにより明治29年に創設されたものであるが、その後に、相続税・贈与税・譲渡所得税・不動産取得税等の経済取引に関わる税制が次々導入され、さらには建物については消費税まで課されている現状である。実体的権利変動への課税制度が充分整った今日、登録免許税制の徴税目的は終了しており、課税根拠も失っているといえる。
登記制度は、取引の安全のために、権利関係を公示することを目的とするものであるが、高額な登録免許税の負担は、中間省略登記など物権変動の実体と異なる不実な登記出現の大きな要因となっており、また、不動産流通の阻害要因として、登記そのものを軽視する傾向を生みだし、登録免許税負担を回避するために、物権変動の過程と態様を事実どおりに登記しないことを求める者もいるなど、経済取引における基盤の一つである登記の公示機能が損なわれることが危惧されている。
またわが国の登記は、対抗要件主義を採用しているが、登記をしないことによる不利益を被らないために登記が事実上強制されているのであって、特別な便益(受益)が生み出されているわけではない。因みに登記を効力要件とし、登記に公信力を付与しているドイツの登記制度では、手数料制が採用されている。
また、登記は権利の確定に関わる準司法手続きであり、その側面からも司法手続(裁判)同様手数料制をとることが相当である。
われわれは、国民の権利保護に寄与する登記制度の充実強化を図るため、登記制度の維持運営に必要な国費を限度とする登記手数料制度への移行を実現するため、全力で運動を展開する。
参考資料
『現行登録免許税制の問題点と改善策について』の意見骨子抜粋
平成20年度日本司法書士会連合会登録免許税制研究会(平成21年8月5日提出)
【研究会意見の骨子】
1.租税の本質は、サービスと負担との牽連関係が遮断された「非対価性」という点にあるが、登録免許税を納付しない限り登記システムを利用できないという制度設計が用意されていることを考えると、登録免許税は租税の本質に合致しないものである。
2.登録免許税の負担が重いことから、その負担軽減のために租税回避というインセンティブが働くことになるが、それは登録免許税収入を減少させるという問題に留まらず、中間省略登記や直接移転取引など様々な登録免許税回避策を招来し、ひいては、登記の適正性を危うくするという問題が惹起される。また、登記を回避した者に対しては課税の根拠がなくなるため、租税行政庁としては対抗手段を打ち出すこともできないという問題がある。
3.登録免許税においては、取引当事者等として課税標準等を熟知する登記申請人に正当と認める税額を確認させて自主的に納付させ、即日処理の建前の審査の下で誤りが認められない限り、それが正当な税額と一致するものと信頼し、他方、それが不当であれば、登記官の判断した税額が正当な税額と一致するものとして認定通知を行い、納税者がこれと正当な税額との不一致を行政争訟によって争う機会を確保した上で、その自認額又は認定通知額の納付・徴収を確認し、速やかに登記をするよう法律を構築したものと理解することができる。このように、納税者と登記機関との関係が自己完結的なものとなっており、租税行政庁の調査の介在がない制度は、手数料制に馴染むものである。
4.登録免許税制が導入された明治時代と現代とは、不動産所有者あるいは不動産流通のあり方が大幅に異なっている。国民の住宅取得促進などの政策目的によって、登録免許税負担を是正(軽減)するために、租税特別措置法による税負担の軽減が常態化しているのは正常といえず、登録免許税制自体の見直しが求められる。
また、不動産登記の登録免許税制は、日清・日露戦争による戦費負担等の国費拡大に伴って創設されたものであるが、既にその徴税目的は終了している。
5.登録免許税が、登記・登録等を担税力の間接的表現として捉えて課税されるものとの理解には限界がある。そもそも、登記を通じて得られると考えられている対抗要件を担税力とするのであれば、動産の対抗要件を担税力とみない理由は乏しいし、対抗要件を失う不動産の売主側にも登録免許税の納税義務が課される理由も判然としない。仮登記や真正の登記名義回復を登記原因とする登記などを考えても対抗力を担税力とみる考え方に対する疑問が惹起される。具体的な提案としては、登録免許税を資格登録に係る登録税と登記システムの利用に関する登記手数料に分割し、後者を手数料制に移行すべきである。
6.国民の権利保護に寄与する登記制度の維持運営に必要な費用負担を限度とする登記手数料制度に移行すべきである。