第3.登記制度の信頼確保とオンライン登記の普及推進

一、司法書士の登記原因に関する調査確認権限を明定し、司法書士に、登記原因証明情報の作成・認証権限、その他添付情報の認証権限等を付与し、もって、登記の真実性の確保とオンライン登記申請の普及を図ること

 上記は、平成21年1月20日開催の司法書士制度推進議員連盟総会に於いてと決議された。

 平成20年1月15日導入の不動産登記オンライン申請特例方式により、平成18年度には1年間の不動産登記オンライン申請件数が、1122件(全申請件数の0.02%)しかなかったものが、平成20年度は約102万件、平成21年度には約162万件となり、全申請件数の14%を超える達成率となった。
 これは登録免許税に軽減措置を設けたインセンティブの効果だけではなく、特例方式により紙媒体の添付書面を別送方式としたこと、登記識別情報も紙で交付可能としたり、又、それを郵送でも取得可能としたこと等々の要因が挙げられる。
 しかし、今の現状のままでは、これ以上の不動産登記オンライン申請の普及は見込めない。その原因は、住基ネットによる公的個人電子認証や法人の電子認証が普及していないことに加え、添付書面となる官公署の各種証明書等の電子化が進んでいないからである。すなわち、不動産登記に必要な添付書面のほとんどが紙媒体であり、電子化されていないというのが現状である。
 平成23年からは、現在のシステムではこの2年間の利用率の増大でシステムダウンの危険性がある為、新オンラインシステムが導入されるが、システムを変えるだけでは、今のままのオンライン特例方式を恒常的にしたところで利用率のアップには繋がらない。不動産登記法の改正をしなければ本格的なオンラインの普及には繋がらない。
 よって、不動産登記オンライン申請の普及推進に向け、司法書士の権限と責任の強化、さらに登記の真実性確保の為に、上記決議を踏まえ、我々は以下のとおり不動産登記法改正の実現に向け活動していく。

(1) 登記原因証明情報の作成・認証権限、その他添付情報の認証権限を司法書士に(登記原因証明情報の司法書士の作成と司法書士のみの電子署名で足りるとすること)

 権利に関する不動産登記は、その95%以上が資格者たる司法書士の代理により申請が行われている。司法書士は、当事者の本人確認並びに登記申請意思確認をし、物権変動の基となる契約の存在を確認し、さらに物権変動があったことの確認をしたうえで登記申請を行っている。
 登記原因証明情報は、当事者、少なくともその権利を失う登記義務者が物権変動を生ぜしめる契約の成立と、その物権変動があったことを情報として提供することとされているが、上記のごとく司法書士が現に行っている調査確認の執務を法文上認め、その権限と責任を明らかにし、登記原因証明情報の作成・認証権限を司法書士に与えることが、不動産登記の真正の担保と不動産登記オンライン申請の利用促進に繋がることとなる。
 又、現在は、官公署等が発行する書面も電子化されているものは僅かである。仮に電子化されているとしても、各官公署は法務局とオンライン化になっていない為、利用出来ない。したがって、同オンライン申請の利用促進の観点からは、できうる限りの添付書面の省略簡素化を推進する必要がある。
 電子化されていない官公署の各種証明書等の添付書面は、PDF化等により司法書士が原本証明し電子署名を付し送信することで、書面原本の送付を不要とすることとする。

(2) 本人確認情報の活用により登記識別情報制度の廃止を含めた見直し

 登記済証の廃止、登記識別情報の導入は、登記済証が原本性・唯一性を有していたことに比べ、登記識別情報が英数字の組み合わせという観念的なものであるため、謄写や情報漏れの防止が困難であり、登記申請の真正担保機能が相当劣ることは当初より指摘されていたことである。
 この機能低下を補うために、専門家による人的補完が不可欠である。
登記済証(登記識別情報)を提出(提供)できない事由について、従来の事由に加え、取引の円滑化が望めない場合、あるいは管理上に支障が生ずることとなる場合が認められた。すなわち、例えば1筆を分筆して数筆になった場合には、その登記識別情報を数回使用しなければならず、管理上の支障をきたすことになる。又、登記識別情報通知は、物件毎・申請人毎に発行される為、多い場合では何十枚、何百枚となり、管理上の支障をきたすのは云うに及ばず、その不動産取引に於いて有効性確認あるいは未失効確認をするのに時間が掛かり、取引の円滑化に支障を及ぼすことになる。又、オンライン申請をする際の登記識別情報の提供にも複数枚ある場合は大変な時間と労力を要する為に、迅速なオンライン申請が出来ない問題がある。
 平成20年1月15日より、登記識別情報の有効性確認及び未失効証明・不交付証明が職務上請求できるようになり、利用者への負担が多少軽減されたとはいえ、利用者である国民や金融機関、不動産業界等は登記識別情報制度について充分に理解をしていないし、余り望んでいない。
  従って、今以上の大幅なオンライン申請の促進と登記の真実性確保を図るためには、現在の登記識別情報制度では限界がある為、登記識別情報提供の有無に拘わらず、司法書士による本人確認情報の活用により登記識別情報制度の廃止を含めた見直しが必要である。

(3) 安全な不動産取引の為の代金決済と登記の同時履行の堅持

 不動産登記規則65条は登記識別情報の失効の申出を規定している。失効申出制度は、登記識別情報が漏えいした可能性がある場合等の対応策として設けられた制度である。
 しかし、不動産取引決済前に登記識別情報の有効性検証を行い、その後代金決済がなされたにもかかわらず、登記の申請までの間に失効の申出がなされた場合には、その登記申請は有効な登記識別情報の提供のないものとして却下される。
 この失効申出が詐欺的に悪用されると、代金決済と登記の同時履行を阻害する要因となり、権利者への権利保全がなされない危険性があることは、当初より指摘されている。
 代金決済と登記の同時履行を確保し、取引の安全性を確立するために、代金決済後の登記識別情報の詐欺的な失効申出の阻止と登記識別情報失効停止期間申出の制度化を早期に実現できるようにする必要がある。

(4) 登記所が発行する証明書等の業務(乙号業務)の完全オンライン化の実現を目指して

Ⅰ 今日の現状

 現在法務省が急速に進めている登記所の統廃合により地域の国民に対する法的サービスが著しく低下しているが、この対応策として、法務省は廃庁跡地の近隣の市役所等に証明書等の「自動発行請求機」を設置している。
 しかし、この「自動発行請求機」は、製作費やランニングコストが極めて高額なため、法務省は厳しい設置基準を定め、統廃合後の市民等からの強い設置要望にも拘らず、その機器の設置数を抑えているのが現状である。因みに現在全国に約30箇所程度である。
 一方、競争の導入による公共サービスの改革に関する法律に基づき、平成22年2月2日から東京都渋谷区、三鷹市、千葉県市川市のセブンイレブン6店舗(各団体2店舗)において、住民票の写し及び印鑑登録証明書を発行するサービスが開始された。実務における証明書の有効性確認の問題や発行箇所の拡大が喫緊の課題となっており、まさに国民の各種証明書の取得に関する利便性向上が試されている。

Ⅱ 司法書士事務所等での証明書の発行ができるシステムの提言

 そこで我々は、乙号業務についてオンラインによる交付システムの構築を提案する。現在は、乙号は申請時にはオンライン申請で可能であるが、証明書等の交付は書面により窓口交付(郵送交付)するシステムとなっている。しかしながら、オンライン申請普及の目的である、国民の利便性の向上、負担軽減、行政官庁の事務合理化・迅速化をはかるとの目的のためには、証明書等の交付も司法書士事務所がオンラインでダウンロードできるシステムを構築すべきである。
 登記の専門家であり、且つ、登記のオンライン申請可能な司法書士事務所で登記事項証明書等の受領が可能となれば、乙号業務の効率化につながるだけでなく、登記制度としても甲号の登記申請とその成果物である乙号の証明書等の発行が一対の制度として完成することにより、地域の法務サービスの向上につながる。
 具体的利点としては、

  1. 登記事項証明書等発行の法務サービス機能をより身近にすること
  2. 司法書士事務所を利用するため新規費用の抑制と利用料金の低廉化
  3. 依頼による司法書士の専門的知見に基づく高度なサービスの提供
  4. オンライン申請促進による電子政府構想の推進

等々を指摘したい。
 さらに、登記所統廃合後も、司法書士事務所が地域に残ることで司法過疎対策につながる効果も期待できる。
 また、技術的課題等については、韓国での運用実績もあり実現可能である。
 以上我々は、登記専門家を活用した乙号の双方向オンライン申請システムの構築とその実現に向けた運動を展開する。